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院長からのメッセージ

第3回「アルコール乱用による身体疾患と、その疲れがいつの間にか失って行く周りからの信用」
            ~大量飲酒者は何故、過度に疲れやすくなるのか~

2018.4.6

 アルコールによる身体疾患として一番ポピュラーなのは肝臓の疾患ですが、アルコール性肝炎から肝硬変、肝癌へ移行する人が非常に多くなっています。

 アルコールが体内で分解されたアセトアルデヒドという物質が肝臓に障害を与えると言われていましたが、それだけではなく、肝障害を起こした細胞とリンパ球が結合しその物質が肝臓を攻撃することが最近解ってきました。そうなると、断酒しても肝臓が正常になるのに長い時間が掛かります

 飲酒している限り肝疾患は進行し、たとえ内科に掛かっていても飲酒生活のため肝炎から肝硬変、肝癌で死に至るケースが多いのです。

 膵臓も、アセトアルデヒドと内臓を攻撃する物質によりダメージを受け、膵炎になり、脂肪の分解が遅れ腹痛や高脂血症、下痢などが続く他に、糖尿病も発症しやすくなります。

 その代表が高脂血症です。

 脂肪の分解が出来ず中性脂肪が上がり、高脂血症になります。その結果、血液がドロドロになって血管に詰まり易くなり、脳梗塞など脳血管障害が多くなります。昔、大量飲酒者が脳卒中という名前で死に至る場合が多かったのは、そういう仕組みによるものだったのです。
 更に、分解されなかった脂肪が内臓に沈着し、心臓や肝臓に脂肪が溜まり機能が落ちます。

 その代表が脂肪肝と言われる現象です。

 次に、乳酸という疲労物質も分解されにくくなり、高乳酸血症が起こりいつも疲労した状態になるのと、乳酸が溜まると腎臓の機能が落ち、特に尿酸が腎臓から排泄されず高尿酸血症(痛風)となります。また、大量飲酒者のほとんどは関節炎や心筋梗塞にも悩まされ続けます。

 アルコール大量摂取による直接的な疲労や臓器疾患によるに加え、疲労物質の乳酸が蓄積し、更に全身倦怠感が起こり、その辛さを誤魔化すために更なる飲酒に繋がり、身体はいつも倦怠感や過労状態となります。

そして、職場においては作業能率が低下したり、遅刻欠勤などが年を経るごとに増えたり、家庭内では自らの役割が果たせなくなり、遂には職場や家庭での信用を失ってしまいます。

 飲酒による肉体の辛さだけではなく、以上のように職場、家庭、社会での信用を失い、その辛さのため意欲も低下してしまいます。

 そうしていつの間にかじわじわと、アルコールによる身体の障害と人間関係の障害が渦を巻くように進行して行くのです。



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